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alternate angles

http://nara.cool.ne.jp/itumo/alt.htm

 若草色のカーテンは光をほとんど通さない。だから部屋は薄暗かった。ベージュの絨毯。白いベッド。薄茶の机。どれもきちんと静かにある。ほのぐらく清潔だ。
 ここに来ると、俺はいつもなんとなく人気のない水族館を思い出す。博物館でもいいかもしれない。
「やっぱり青が一番似合うな」
 髪留めの具合を見ながら庚(かのえ)は笑う。
「アイシャドウもブルーがいいかな。切れ長の目だからきっと似合う」
 うつむいていると手が伸びて顎を持ち上げられた。嬉しいだろうと庚は言う。細い眉が神経質にひそめられた。
「似合うって言ってんだけど」
「……ありがとう」
 ささやくようなか細い声を喉の奥から押し出した。庚は一瞬目をきつくする。けれど許容範囲だったらしく、小さくうなずいてみせた。
「そうそう、素直じゃないとねー」
 おんなのこはね、と一文字ずつ区切るようにして言う。化粧道具を取り出し、鏡の前にひとつずつ並べた。並べながら説明も聞かされるけれどまるで頭に入らない。いつものことだ。
「さ、座れよ」
 手を差し伸べられる。できるだけ静かな動きで、俺は手を重ねる。いざなわれるままに動き、ゆっくりと椅子に腰掛ける。羽のように、と以前庚は言っていた。さり気なくやさしく軽やかに。庚が求める条件はいつも厳しい。



司さんの、なんだか美しい小説です。
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