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スクールガールラプソディ

http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1308332017/138-

153 :色々書いた人:2011/09/02(金) 22:00:15.23 ID:VQ/C30+p
#138のネタをベースに、実験的な掌編(の出だし)を書いてみました。

『スクールガールラプソディ』

 ──ピピピ……

 可愛らしい目覚ましの音で目が覚める。
 ベッドの上で起き上がり、部屋を見回すと軽い溜息が出たけど、朝から落ち込んでいても仕方ないので、さっさと起きてパジャマから着替える。
 母──「ママ」が用意してくれた今日の着替えは、メリーゴーランドと観覧車の絵が描かれた黒いTシャツと、白地に青の細かい水玉模様が入ったスカート。
 暁美おばさんから沢山もらってきた従妹の幸枝お姉ちゃんのお下がりじゃなく、一昨日の土曜日、「ママ」とデパートにお出かけした時に買ってもらった新品だ。
 たったそれだけのことなのに、なんだか少し嬉しくなってしまう。
 一緒に置かれていた白いシミーズとクリーム色のパンツを着てから、おニューの服に着替え、紺色の二ーソックスを履く。
 今朝は少し寒いから、ちょうどいいだろう。
 部屋を出て、洗面所で顔を洗ってから、ダイニングにいる母に「おはよう」の挨拶をすると、「ママ」はニッコリ笑いかけてくれた。
 「おはよう、マキちゃん」
 テーブルについて、「マキ」はイチゴジャムをたっぷり塗ったトーストとサラダとホットミルクの朝食をとる。甘い物を気兼ねなく食べられるようになった点だけは、「こう」なったことの恩恵だろう。
 「ごちそうさま」のあと、洗面所で歯を磨く。
 そのまま部屋に戻り、学校に行こうとしたところで、「ママ」に呼び止められた。
 「こ~ら、髪の毛梳かしてないでしょ。やってあげるからココに座りなさい」
 逆らっても無駄なので、「マキ」は大人しく「ママ」の目の前の椅子に座った。
 愛情の籠った手付きでヘアブラシで丁寧に髪を梳かれるのは、決して悪い気分ではないのだが、そのあと母がやたらと可愛らしい髪留めやリボンを付けたがるのが困りものだ。
 「いってきまーす!」
 赤いランドセルを背負って元気に家を出た時には、起きた時のユウウツな気分もだいぶ納まっていた。

154 :『スクールガールラプソディ』 :2011/09/02(金) 22:00:48.73 ID:VQ/C30+p
 通学路の途中でクラスメイトの女の子たちと合流して、昨日放映のアニメ『プラナリキュア』や先週末発売された漫画誌『ぐーてん』などの話題に花を咲かせる──と言っても、それほどまだ頻繁に口をはさめるわけでもないのだが。
 学校に着いても授業開始直前まで、その雑談は続く。
 つくづく女の子はおしゃべり好きなんだなぁ……と半ば感心しつつ、そのおしゃべりの輪に自分も少しずつ慣れつつあることに気づいて、「マキ」が少しだけ複雑な気分になりかけたところで、担任の蒼井三葉が5-Aの教室に入って来た。
 「はーい、出席をとりますから皆さんお静かに」
 まだ20代半ばと若いうえに美人で優しく、6-Bの担任・天迫星乃と並んで桜庭小で人気を二分する教師だが、締める時はキチッと締めるタイプだ。
 「伊東智子(いとう・ともこ)さん」「はーい」
 「尾上聡美(おのうえ・さとみ)さん」「ハイッ!」
 「河原真樹(かわはら・まき)さん」
 おっと、自分の名前が呼ばれたようだ。
 「…はい」
 半呼吸の躊躇いをかみ殺して、「マキ」は素直に返事した。
 「工藤明日香さん」「はいっ」
 結局、本日の5-Aには男女共に欠席者はいなかったようだ。

 授業時間は別段いつもと変わらず平穏無事に進行していったのだが、給食の時間にちょっとしたトラブルがあった。
 クラスメイトの男子のひとり、お調子者として知られる吾妻雄二が、女子のひとりからデザートのプリンを横取りしたのだ。
 当然、その男子と、女子「達」──取られた娘の友人や学級委員の呉羽しずるたちとの間で言い争いが起こる。
 その様子をひどく客観的に見つめている自分に気づいて、「マキ」は驚く。
 かつての時分であれば1も2もなく雄二の味方をしただろう。しかし、「今の立場」になってから、自分でも気付かなかったが少しずつ物の見方が変わっていたらしい。
 雄二サイドの無法はよく分かるが、さりとて、しずるサイドのヒステリックな糾弾に積極的に同調する気にもなれない。
 結局、担任の蒼井先生を呼んで来ることで、その場は何とか無事におさまった。
 「マキちゃん、ありがと~」
 途中から本人そっちのけでのケンカに発展しかかっていた、当の被害者の少女・武藤千種が感謝の言葉をくれるが、「マキ」としては別段感謝される程のことをしたつもりはない。
 むしろ、子供同士のケンカに大人(教師)を介入させてしまったことに、内心スッキリしないものがあるのだが……。
 「いいえ、あの争いを無理なく納めるのは、河原さんのとった方法が一番良かったと思うわ。あたしもついアツくなっちゃってたから」
 堅物な学級委員のしずるにまで褒められて少々こそばゆいが、悪い気はしなかった。

155 :『スクールガールラプソディ』 :2011/09/02(金) 22:01:28.86 ID:VQ/C30+p
 5時間目は体育の時間だった。
 「今日は体育館でバレーボールだってさ」
 「わーい、ウチの体育館って、外と違ってクーラー入ってるから、この季節は助かるなぁ。よかったね、マキちゃん」
 「う、うん。そうだね」
 これまではその立場上、女子と一緒に着替えることに少なからぬ抵抗感があり、また女子の側からも冷ややかな壁のようなものを感じていたのだが、先程の昼休みの一件が功を奏したのか、女子側の壁はほとんど消えているようだ。
 いろいろな女の子たちが、積極的に「マキ」に話しかけてきた。
 その対応に追われていたせいか、「マキ」の方も、赤い襟の女子用体操服と五分丈の黒いスパッツに着替えるのを、いつもみたく躊躇わずに済んだのは、幸運と言うべきか。
 その日の授業では、最初の20分ほどでトスやレシーブの練習をしたのち、残りは6人チームに分かれて、5分勝負でバレーボールの試合を行うことになった。
 「マキ」の所属する女子第二チームは、じつはバレー部でセッターを務める千種と、巧みな頭脳プレイを指示するしずるがいたためか、2試合とも勝利を収めることができた。
 「チグサたちだけの力じゃないよ~。マキちゃんがブロックを決めてくれたから……」
 「そうね、河原さんの奮戦がなければ、莉子達はともかく、男子チームには勝てなかったと思うわ。ありがとう、河原さん」
 かつてはほとんど話したことさえなかった大人しい千種と、これまで一番自分を目の仇にしていたはずのしずるから認められ、感謝されたことに、不思議な感動を覚える。
 「ううん、チームメイトだもん。あたり前でしょ。それから、苗字じゃなくて「マキ」でいいよ、呉羽さん」
 だからだろうか。気がつけば、そんな言葉が自然と口からこぼれていた。
 「オッケー、じゃあ、あたしも「しずる」って呼んで」
 体育館で手を取り合い、ニッコリ微笑み合う少女たち。
 その光景は、心が洗われるような清々しい光景だった。
 ──もっとも、3人の中のひとりは、本当は少女ではなく「少年」なのだが。

 桜庭小学校5年A組、出席番号男子の3番・河原真樹(かわはら・まさき)。
 それが、「マキ」と呼ばれている「少女」の本来の姿だった。

184 :114の人:2011/09/04(日) 04:45:42.89 ID:iOonN+dz

#物語は、およそ1ヵ月ほど前にさかのぼります。

『スクールガールラプソディ』(中編)

 「もぅっ、ダメでしょ、河原くん!」
 昼休みの教室。普通なら、生徒達が楽しく雑談したり、友達どうして遊んだりしているはずの場所だが、今は静かな緊迫感にあふれていた。
 そこにいるのは、先生と男子生徒。他の生徒達もいるが、遠巻きに固唾を飲んでふたりを見守っている。
 「河原くんは男の子でしょ。どうして女の子を泣かせるようなコトするの?」
 担任の女教師、蒼井三葉がやや語調を厳しくして問うたが、問われた相手──河原真樹(かわはら・まさき)はプイと顔を背けて答えない。
 (はぁ……困ったわねぇ)
 感情的にならないよう努めながらも、三葉は内心頭を抱えていた。
 この河原少年、見かけはちょっと整った顔立ちのプチ美形なのだが、なんと言うか中味は「悪戯っ子」「悪ガキ」そのものなのだ。とくに女の子へのいじめやイタズラがヒドい。まさか今時小学5年生にもなってスカートめくりをするような強者が存在するとは思わなかった。
 教師にも反抗的で、それでいて体育はもちろんその他の学科の成績も悪くなく、クラスの男子からはそこそこ信望があるようだ。逆に女子からは当然ながら嫌われている。
 (どうしたものかしら……)
 お説教しながら、相手が馬耳東風と聞き流しているのを見て、ますます困惑する。これがプライベートなら──たとえば甥っ子が相手なら、容赦なく折檻して肉体言語で叩き込むのだが、さすがに現在の風潮で体罰はマズい。
 いや、三葉自身は正直「PTA? モンペ? なにそれおいしいの?」というタチなので、いざとなったらソレもやむなしと思っていたのだが、以前、同僚の天迫星乃と飲んだ時に、キツく諌められたのだ。
 いわく、「体罰は本当に最後の手段。安易に頼る教師を、私は信用できない」と。
 成程一理ある話なので、三葉としてもその方針に賛同していた。
 (けど……そうなると取れる手段が限られるのよね)
 あとは親に連絡して叱ってもらうくらいか。それはそれで業腹だし、必ずしも有効とは限らないのだが……。

185 :『スクールガールラプソディ』2:2011/09/04(日) 04:47:12.78 ID:iOonN+dz
 しかし、そんな蒼井教諭の悩みは、その日の6時間目の学級会でひとりの女生徒から出された提案によって、コペルニクス的転回を迎えることになった。
 「河原くんは、女の子の気持ちをわかるべきだと思います! いっそのこと、しばらくスカートを履いて女子として学校生活してもらったら……」
 女子の学級委員を務める少女、呉羽しずるの提案が、三葉の脳裏に突拍子もないアイデアをもたらした。
 「それよ!!」
 提案者を含めた38対の瞳がいぶかしげな光を浮かべているのにも気づかず、三葉は自習を命じて職員室に戻り、真樹の家に電話するのだった。

  * * * 

 三葉からの連絡を受けた真樹の母・真沙美は、驚愕した。
 真樹は確かに家でもかなりの「やんちゃ」だったが、まさか他人様の子、それも女の子に迷惑をけているなんて……。
 普通なら母親の手に負えない場合でも父親が叱るという手段があるのだろうが、生憎河原家の大黒柱・善樹は、紀行カメラマンということで一年の大半を留守にしている。
 また、真沙美自身も英和翻訳を生業としており、在宅で仕事をしてはいるものの、専業主婦ほどキッチリ子供の世話をフォローできているとは言い切れない部分はあった。
 それでも、まさか我が子が「いじめ」をするような駄目人間に育っていたとは夢にも思わなかった。
 彼女自身はいじめを受けたことはないが、学生時代に親友がいじめから自殺未遂を起こしており、人一倍そういった事柄に敏感(あるいは過敏)だった。
 しばし脳裏で様々な考えを巡らせたのち、真沙美は担任の案に賛成する。
 母親の賛同を得たという大義名分をかざして、三葉は学校側からの協力も取り付けることに成功。
 こうして、母親・担任・クラスメイト(主に女子)の三者の協力のもと、腕白小僧をお淑やかな女の子に躾ける試み、「MFL(マイフェアレディ)プロジェクト」が開始されたのである!

 「じょ、冗談だよね、母さん」
 "プロジェクト"の開始時、言うまでもなく真樹自身は強く反発した。
 当然だろう。
 「これから1ヵ月間、学校は元より家でも女の子として生活しなさい」と言われて、素直に従う小五男子がどれだけいると言うのか。
 しかし反発したものの……程なく、彼は母や担任の言いつけに従わざるを得なくなった。
 おとなしくか弱い文学少女がそのまま大人になったように見える彼の母・真沙美は、実は合気道三段・薙刀二段の武術の達人だったのだ!
 これは、元々旧家の子女で、たしなみとして幼少の頃から習っていたという背景があるらしい。甘さを捨てた彼女は、一介の腕白小僧如きが太刀打ちできる存在ではなかった。
 ほとんど抵抗らしい抵抗もできずに真樹は押さえこまれ、プロジェクトに従うことを約束するまで30回近くお尻をぶたれた。
 さらに、今後女の子らしくない言動を見つかったら、その日はおやつ抜き、逆にうまく女の子らしい振る舞いができるようになったら、来月のお小遣いアップ……という"鞭"と"飴"も設定された。
 「夏休みが始まる1ヵ月の辛抱だ」と自分に言い聞かせて、やむなく真樹は耐え忍ぶ決意をしたのである。

 * * * 

186 :『スクールガールラプソディ』2:2011/09/04(日) 04:47:46.75 ID:iOonN+dz
 朝ベッドで起きた時から、「彼女」の一日が始まる。
 着替えはすべて女物。わざわざ伯母の家から従妹の幸枝のお下がりを、母がもらって来たのだ。それも、ワンピースやスカート類ばかりで、ズボンはいかにも女の子らしい刺繍の入ったサブリナパンツひとつくらいしかない。
 さすがに下着は新品だが、こちらも当然女児用。近所のユ●クロのセールを利用して、10日分気回せるだけの数を母が購入していた。
 前開き構造のないカラフルな女児用ショーツを履き、俗に「ラン型切替スリップ」とも言われるスクールシミーズを頭からかぶる。
 当初は、そのすべすべしたナイロンの感触に何かイケナイことをしてるような気がしてドキドキしたが、一週間も経つとそれなりに慣れる。
 その日のワードロープは母親の見立てだ。どうにもフェミニンな「可愛らしい」服装が多いのだが、逆らっても無駄なので、黙々と着替える。決して、可愛い格好も悪くない、とか思ってないのだ……たぶん。
 「おはよう、マキちゃん。今日も可愛いわよ♪」
 "プロジェクト"が始まってから、真樹は「マキ」と呼ばれるようになった。「その方が女の子っぽいし、可愛らしいから」とのこと。
 「……おはよう、ママ」
 そして、「マキ」は母のことを「ママ」と呼ぶ。これも無論母からのお達しだ。
 とは言え、それ以外の、洗顔、朝食、歯磨きなどについては、これまでとそれほど変わるわけではない。せいぜい、口数を少なめにしてできるだけ女言葉を使わず済むようにしているくらいだ。
 ただ、自分の部屋を女の子仕様の可愛らしいものに変えられてしまったのには少々参った。抗議したのだが、「こういうのは形から入るもの」「1ヵ月経ったら戻してあげる」と言われたので渋々納得した。
 朝食のあと、身支度が済んだら、赤いランドセル(これも従姉のお下がり。ただし、ほとんど使ってなかったので真新しい)を背負って学校へ。

 学校でも「マキ」は完全に女子として扱われ、男子の遊びの輪には入れてもらえない。どうも、男子が「マキ」に近づくことは禁じられているらしい。
 その代わりに、女子が色々話しかけてくる。最初の頃は鬱陶しく思っていたのだが、男子が相手にしてくれないとなるとさすがに退屈で、数日後には「マキ」もポツポツ会話に参加するようになっていた。
 女子の会話についていくために、少女マンガや女子向けのアニメなども見るようになった。とくに後者は案外おもしろいので、最近では密かに楽しみにしているくらいだ。
 母親も協力的で、レンタルで以前の話の分のDVDを借りてきてくれた。少女マンガも気前よくコミックスを買ってくれたので、「マキ」の部屋の本棚にはかなりの数が並べられている。

 閑話休題。
 体育の時も女子と一緒に更衣室で着替えている。幸か不幸か「マキ」──いや、真樹は11歳ながらまだ性的な方面の知識や好奇心に疎いため、それほど恥ずかしい思いはせずに済んだ(無論、だからと言って違和感や場違い感が皆無だったわけでもないが)。
 これは、女子の側にとっても変に意識されなかったので僥倖だったと言えるだろう。
 放課後も、男子の友人からは誘われず、逆に女子のクラスメイトが声をかけてくることがある。
 真樹なら死んでも行かなかったろうが、母親や担任から「一月後までに、普通の女の子として振る舞えるようなること。できなければ、もう一ヵ月延長」と申し渡されているので、その参考になれば……と、「マキ」は何回か女子に混じって遊びに行った。
 そんな時、真樹の知らない「女の子の世界」を垣間見れることもあって、「マキ」は好奇心を大いに刺激されていた。

187 :『スクールガールラプソディ』2:2011/09/04(日) 04:49:15.01 ID:iOonN+dz
 結論から言うと、それを強制されているという事実を除くと、実は真樹は「マキ」としての暮らしに意外にストレスは感じていなかった。
 「懲罰」と言う意味では、この試みはあまり効果的とは言えなかったろう。しかし、「女子としての生活を通じて女子への理解を深める」という意味では、それなり以上の効果はあった。
 中でも、自分がスカートを履く立場になったことで、ソレ(スカートめくり)が、いかに屈辱的、かつ羞恥心を刺する行為なのかは、如実にわかった。
 「マキ」の心理としては、「自分が女物のパンツを履いていることを男子に見られるのが恥ずかしい」からなのだが、たとえそれが真実であったとしても、「パンツを見られるのが恥ずかしい」という事実そのものに違いはなかったのだから。

 本人も周囲も知らないうちに、少しずつ真樹と男子達の関係が疎遠になり、「マキ」と女子のコミュの間が近づいていく。
 そんな状況下で、「プリン強奪事件」と「バレーの試合での完勝」というイベントを通じて、真樹を嫌っていたしずると仲良くなったことで、「マキ」は完全にクラスの女子の輪に受け入れられることとなったのだ。

192 :『スクールガールラプソディ』3:2011/09/06(火) 17:43:58.84 ID:YRGxP6+I
#後編投下……なのですが、長いけど話がまとまんなかった!

『スクールガールラプソディ』(後編)

 7月上旬に入り、ここ桜庭小学校でも、プール開きが行われた。
 体育の授業の一環とは言え、やはりこの季節、子供にとっては水遊びできる機会というのは嬉しいものだ。
 5-Aの生徒達は、今年最初のプール授業ということで、特別に自由時間(正確には「水に親しむために水中で遊ぼう」というテーマ)となった。
 「しずちゃん、いったよ~」
 「任せて! マキ、はいっ!!」
 「オッケー! それっ」
 しずるや千種、そして「マキ」たちは、プール脇の用具室で見つけたビーチボールを使って水の中でバレーの真似ごとをしてたりする。と言っても、単にトス回ししているだけなのだが、それだけでも友達とやっていれば結構楽しいものだ。
 キャッキャとはしゃぎながら水中でボールを追い掛ける少女達。「ロ」のつく趣味の人が見れば、白い水泳帽と紺色の競泳水着姿の彼女達にヨダレを垂らしたに違いない。もっとも、その中のひとりが実は「男のコ」であると知ったら目が点になったかもしれないが。
 言うまでもなく、「マキ」こと河原真樹(まさき)のことだ。
 もっとも、152センチ足らずの身長といい、華奢な身体つきといい、体毛の薄い滑らかな肌と言い、外見から「彼女」が本当は「彼」であることを読みとれる証はほとんど存在しなかったが。
 驚いたことに、女子用水着を着用しているその股間にも、男子なら本来あるはずの膨らみが見当たらないのだ。
 最近仲が良い呉羽しずるが、耳打ちしてコッソリ聞いてみたのだが、「マキ」は顔を赤らめ、「ないしょ」と言って教えてくれなかった。

 無論、勘の良い読者の皆さんは見当がついているだろう。
 そう、いわゆる「タック」──それも人体用接着剤を使用したより高度なテクニックで、マキの股間は一時的に「整形」されているのだ。
 これは、プールが始まれば自分が女子の水着を着なければいけないことに気付いた真樹が、母親に相談したのがキッカケだった。
 「女の子の水着を着て股間がモッコリしたら恥ずかしい」という「娘」の訴えに、真沙美は真摯に対応し、インターネットで「ソレ」のやり方を見つけてきたのだ。

 プール開きの前夜、風呂に入ったのち、真沙美は、チェリーピンクのナイティを着た真樹のショーツを脱がせ、ベッドに仰向けに寝かせた。そのまま、真樹に足を上げて自分の足首を持つように言う。
 母親とは言え自分の丸出しの股間とお尻を見られる羞恥から、顔を真っ赤にしながら、真樹はその指示に従った。身体が柔らかいので、その程度は十分可能なのだ。
 それを確認すると、真沙美は、真樹のお尻を正面から見える場所に移り、両脚の間を掻き分けるようにして右手を前に伸ばすと、息子の"ムスコ"と付属品の"ボール"をむんずと掴む。
 真樹が驚く暇もなく、フクロの付け根のあたりを両手でまさぐり、何かの位置を確認したかと思うと、引っ張るようにして片方のボールを体の中に押し込んでしまった。
 最初は少しばかり手間取っていたものの、それでコツを掴んだのか、もう片方は比較的スムーズにその作業を行うことができた。
 続けて真沙美は、元々まださほど成長していないスティック部を押さえ、そのまま後ろ向けに折り曲げると、体内に押し込んだボール部に蓋をするような感じで、先がお尻の方を向くように押さえつけえ、接着剤で固定する。
 最後に、ボールの入っていた「袋」部分の皮を、左右からスティックを隠すように接着剤で貼り合わせれば完成だ。
 その結果、マキの股間は、パッと見は女の子のアソコと見まがう形状になっていた。その代償として、小用を足すときも女子同様座ってすることしかできないが、元々「罰」のあいだは女子トイレを使う取り決めになっているので、さして問題はないだろう。

193 :『スクールガールラプソディ』3:2011/09/06(火) 17:44:32.63 ID:YRGxP6+I
 もっとも、その結果マキの心情面には少なからず影響はあったようだ。トイレというプライベートな空間でさえ、常に「女の子」であること強制されるのだから無理はない。
 本人は複雑そうな表情をしていたが、さほどストレスに感じている風ではなかった。むしろ、それ以降、日常的な所作がどことなく女性的になったように見受けられたくらいだ。

 おかげで、今のようにスクール水着から着替えるため、更衣室で女子の中に混じっていても違和感は皆無だ。さすがに胸はまったくないが、この年頃ならブラジャーが必要な子は全体の6割程度なので、別段おかしくはない。
 ノースリーブで向日葵柄の黄色いサマードレスに着替え、肩紐のあたりを整えている様子なぞは、本人は気付いていないがお年頃の女の子そのものだ──と言うか、既にクラスの女子と大半の男子が、マキの本当の性別を半分忘れかけている。
 「真樹」と比較的親しかった男子の数人はさすがに覚えているようだが、かつての「彼」をよく知るだけに、今の「彼女」とのギャップに戸惑い、近づいて来ない。
 こうして、「真樹」からマキへの変化は毎日も少しずつ(しかし、大人達の予想を遥かに上回る速度で)進行していくのだった。

 5時間目のプールのあとは、いつもと変わり映えのしない国語の授業を経て放課後となった。
 「しずちゃん、マキちゃん、早くはやく~」
 いつもはおとなしい武藤千種が、珍しく浮かれてハイになっている。
 「ちょ……待ってよ、千種ちゃん!」
 「ふふっ、千種ってば……慌てなくても体育館は逃げないわよ」
 実は、先週の体育の時間でのバレーの試合での活躍にティンときた千種が、自らの所属するバレー部にふたりを勧誘したのだ。
 桜庭小学校では、5・6年生に週1回、時間外のクラブ活動を励行している。自由参加という建前ではあるが、大半の生徒が「クラブ」に所属し、活動時間を楽しみにしていた。
 幸か不幸かマキとしずるはふたり共クラブに入っていなかったため、「とりあえず見学だけ」と言うことで、今日の部活に同行することになったのだが……。
 バレー部の顧問が彼女達のことをよく知るクラス担任の蒼井三葉であるせいか、うまくノセられて、気が付けば体操服に着替えてふたりも練習に参加していた。とは言え、決して嫌々というわけではないし、それどころかむしろとても楽しい時間だった。
 さらには、六年生との紅白戦にまで参加する始末。先週の体育と同様、同じチームになった千種・しずる・マキは健闘したのだが、さすがに一年間の年齢と経験値の差は大きく、ダブルスコアに近い形での敗北となった。
 もっとも、もう片方の5年生チームは、ほとんど完封に近い形で負けていたので、むしろ大健闘と言ってよいだろう。
 「いやぁ、キミ達、見どころあるねぇ」
 「え? そっちの子とそっちの子は、見学!?」
 「もったいないよ! 絶対ウチに入んなよ!」
 6年生の先輩達に口を揃えて褒められては、しずるとマキも悪い気はしない。
 先輩も他の5年生の子達も明るくていい人揃いだし、クラブ全体の雰囲気も楽しそうだ。現に、しずるは本格的に入部を検討しているようだ。
 マキも本当は「入部します!」と言いたかった。
 (でも、ボクは……)
 自分は本当は河原マキではない「真樹」だ。それでは、仮にバレー部に入ってもココにいるメンバーと一緒に部活をすることはできないのだ!
 その時、初めて、マキは自分の性別に対して疑問、あるいは落胆を感じたのだ。
 (──どうして、女の子に生まれなかったのかなぁ)
 それは、ほんの一瞬だけ心の中に浮かびあがり、明確に自覚されることなく、潜在意識の波間に沈んでいった想い。
 しかし、決して消えてしまったわけではなく、それどころかマキの心の中をこれまでとは別の色へとゆっくりと少しずつ染めていく契機となるものだった。

 * * * 

194 :『スクールガールラプソディ』3:2011/09/06(火) 17:44:53.69 ID:YRGxP6+I
 「真樹」がマキとなって、ほぼ一月が経過した。
 今日は一学期の終業式。いよいよ明日から夏休みだ。
 (今日で終わり……なんだよね)
 放課後、後ろ髪ひかれる思いを堪えて、しずる達の誘いを断り、マキは決意の色を瞳に浮かべて、職員室の三葉の元へ向かった。
 三葉が預かっている「真樹」としての体操服その他、男子生徒としての物を返してもらうためだ。
 しかし、三葉の答えは「NO」だった。
 「またダメですよ、河原さん。約束は「学校で1ヵ月」だったはずでしょう? 日曜日を挟んだから、あと4日はそのままでいてもらわないと」
 つまり、二学期も4日間は女子として過ごせということなのだろうか。
 屁理屈のような気もしたが、その程度で目くじらを立てることもないだろうと、マキは了解して帰路に就く。
 自分が、「まだ女子生徒でいられる」「しずるや千種達とも仲良くできる」ことに、どこか安堵していることに気づかないフリをして。
 「もしもし、河原さんのお宅でしょうか? はい、5-Aの担任の蒼井です。先程マキさんとお話したのですが…………ええ、そうみたいです。では……はい、そのように」
 「電話を切った三葉は、とても楽しそうな顔をしていた」と、隣席の同僚、天迫星乃が後に証言している。

 自宅へと帰ったマキは、担任から聞いた「二学期も数日間、女の子で通学」の件を恐る恐る母に報告した。
 無論、母の真沙美は既に本人から電話を受けていたのでとりたてて驚くことはなく、逆に「じゃあ、お家でも夏休みのあいだはずっとマキちゃんでいましょうね」とニコニコと無邪気な笑顔を浮かべていた。
 もっとも、てっきりグズるとばかり思っていた「娘」が、意外なほどアッサリ同意した点については、逆に少しばかり驚いたが。

 * * * 

195 :『スクールガールラプソディ』3:2011/09/06(火) 17:45:31.04 ID:YRGxP6+I
 ともあれ、そんなワケで、周囲(もしかしたら本人も含め)の賛同のもと「河原マキ」の夏休みは始まったのだった。
 例年なら河原家に遊びに来る何人かの男友達は、今年の夏はひとりも顔を見せない。
 代わりに、しずるや千種達女の子の友人から、お誘いの電話が頻繁にかかってきたし、その殆どにマキは喜んで出掛けて行くのだった。

 駅前に出来たショッピングセンターで、「女の子同士」でワイワイ言いながらウィンドーショッピング。
 以前は買い物なんて退屈で、さっさと済ませるものだと思っていたが、おかげでお友達と「あーだこーだ」言いながら色々なお店を回ることの楽しさに、マキは目覚めていった。

 さらに、その時買った水着を着て、市民プールへも何度となく遊びに行った。夏休み中に合計10回近くも泳ぎに行ったせいで、3人とも水着の日焼け跡がクッキリと裸身に焼き付いてしまったほどだ。
 マキの水着は、千種の強引なプッシュで買ったミントグリーンのセパレート。トップの形はベアトップタイプのキャミソールに近いが、左右の脇から伸びた細い紐が首の後ろで結ばれているので「ポロリ」の心配はまずない。
 例のタックのおかけで、ビキニタイプのボトムのラインもスッキリしたものだ
 ちなみに、千種はピンクと白のワンピース、しずるは意外に大胆な黒のビキニだった。

 月曜の午前中は学校でバレー部の練習がある。
 しずるとマキは「仮入部」という扱いなのだが、ふたりとも運動神経がよいうえ、しずるは咄嗟の判断力が、マキは本能的な勘に優れたタイプということもあり、6年生の先輩達からはすっかり「期待のホープ」扱いされていた。
 「こう……河原さんが鉄壁の守りで攻撃を叩き落としつつ、呉羽さんが相手の隙を窺って適確な指示を出し、セッターの武藤さんがそれに応えてトス上げてくれたら、完全にコッチのペースだね!」
 6年生のキャプテンである藍原沙織が楽しそうにチーム設計を語る。
 「うんうん、あとは5年にもパワフルで精密なアタッカーがいれば完璧だよ♪」
 副キャプテンの武内ちはやも頷いている。
 「それは、背の高い沢木さんか、バネのある森村さんに期待したいかなぁ」
 「いっそ、河原さんに攻防の要になってもらうのもいいかもね」
 小学生のバレーボールチームとは思えぬハイレベルな会話に、5年生は目を白黒させている。
 「あ、あのぅ、あたしとマキは一応「仮入部」なんですけど……」
 恐る恐るしずるが口をはさむが、「こんな逸材、今更逃がすワケないでしょ!」と先輩達に却下されて苦笑い。
 練習はそれなりにハードだったが、同時にとても楽しい時間でもあったのだ。

 あるいは単にお互いの家に遊びに行き、まったり冷たいものでも食べながらおしゃべりしたり、テレビを見たり、ゲームしたりすることもあった。

196 :『スクールガールラプソディ』3:2011/09/06(火) 17:46:02.21 ID:YRGxP6+I
 しずるの家は、商店街で飲食店を経営しており、「紅茶とケーキの美味しい喫茶店」とタウン誌で取り上げられたことも何度かある。
 お店のパティシエでもあるしずるの母が、遊びに行くと必ず新作ケーキを出してくれるので、マキも千種も楽しみにしていた。時には、簡単なレシピを教えてもらうことも。
 「しずるがウチに友達を連れてくるなんて珍しいなぁ」
 熊のような髭を生やした大柄な、いかにも「ひと昔前の喫茶店のマスター」という印象のしずるの父も、少し驚きながら歓迎してくれた。
 「この子ってば、ちょっと意地っ張りで融通が効かないところあるでしょ。だから、親しくなれる子は少ないみたいなのよ。だから、これからも仲良くしてやってね」
 「お、お母さんッ!」
 母の言葉に真っ赤になってはにかむ、しずる。もちろん、千種もマキも大きく頷いた。

 一方、千種の家は普通のサラリーマンで、父親は大手スポーツ用具メーカーの部長さんをしているらしい。そのせいか、かなり広い家のあちこちにトレーニング器具の類いが色々置いてある。
 聞けば、父親自身、元十種競技のアスリートで、いまでもトレーニングを続けているのだとか。千種も頻繁にソレにつきあっているそうだ。
 成程、だから内気でおとなしめの性格の割に彼女の運動能力が高いのかと、マキ達は納得する。
 専業主婦である母親の方は、いかにも「良家の奥様」といった感じの上品で可愛らしい感じの女性で、マキたちにお茶とともに手作りのマドレーヌやスコーンなどを振る舞ってくれた。
 さすがに本職である千種の母には及ばないが、それでも凄く美味しい。
 さらに、時折、娘も含めた女の子達に、かぎ針編みやパッチワーク、ぬいぐるみ作りといった手芸の手ほどきをしてくれた。その中でも、マキは編み物が巧いと褒められ、物を作る楽しさに目覚めていく。

 そしてふたりがマキの家を訪れたときは、真沙美も仕事の手を休めて、「娘」の友人を歓待する。
 以前述べた通り、彼女も元は旧家の出なので、女性のたしなみに関しては一家言あるタチなのだ。
 しずるの母からお菓子作りを、千種の母から手芸を教わっていると聞いて、少し対抗意識が出来たのか、真沙美は3人に茶道と華道の基本を教えるようになった。
 内心小学5年生にはまだ早いかと思っていたのだが、精神年齢の高いしずるは元より、千種やマキも、素直に彼女の教えるお稽古事に真面目に取り組んでくれたのは、驚くと同時に喜ばしいことでもあった。
 真沙美は和裁の腕も達者で、最初の時は3人とも洋服のままだったが、翌週しずると千種が遊びに来た時には、マキの分も含めて3人のための着物を縫い上げていたくらいだ。
 少女達は、そのまま和服の着付けも習うこととなった。

197 :『スクールガールラプソディ』3:2011/09/06(火) 17:46:35.83 ID:YRGxP6+I
 8月半ばに、河原家に世帯主たる善樹が帰って来た。
 あらかじめ妻から話を聞いていたのか、恥ずかしがるマキのことを愛しげに目を細めて見つめ、ぜひ記念写真を撮ろうと鼻息が荒い。どうやら、彼も妻同様、「できれば娘が欲しかった!」クチらしい。
 父の勢いに負けたマキは了解し、その後半日近くをかけて、さまざまな服装&背景で、200枚以上の写真を撮られるハメになったのだった。
 もっとも流石プロのカメラマン。現像して引き延ばしたものがパネルにして、リビングの壁に飾られることとなったのだが、マキ自身にさえ、自分がモデルをしたモノとはとても思えぬほど、幻想的な美少女っぽく映っていたのだが。 
 そして、巧い具合に善樹が仕事の旅に出かける前に、夏祭りの機会が巡って来た。
 元より3人娘は一緒に出掛けるつもりだったのだが、話の流れで彼女達の両親も合流することとなり、そのおかげで3つの家に家族ぐるみでの付き合いが生まれることになった。
 真沙美の手による、鮮やかな藍色、紅色、萌黄色の浴衣を着たしずる、マキ、千種の3人は、遠巻きに両親に見守られながら、そのままお祭り(というか縁日)を満喫することができたのだった。
 ちなみに、その途中で三人娘が、中学生と思しき一団にナンパされるというハプニングもあったが、彼女らが小学生であることを知る(浴衣を着ると存外大人びて見えるものだ)と、気まずい顔で退散していったので、結果オーライだろう。
 「まったく……あたし達に声をかけたのは見る目があると思うけど、紳士としての礼儀が足りないわね!」
 とは、しずるの談。他のふたりは苦笑していたが。
 また、縁日の屋台で「お嬢ちゃん達可愛いからオマケしてあげよう」という言葉を度々聞いたのは彼女らの魅力故か、あるいはここのテキ屋にロリコンが多いのか……。

 そして迎えた夏休み最終日直前の8月30日。3人とも既に夏休みの宿題は終わっていたため、この日の夜は千種の家でお泊まり会が催された。

198 :『スクールガールラプソディ』3:2011/09/06(火) 17:47:00.04 ID:YRGxP6+I
 千種の母を3人で手伝いながら晩ご飯を作り、19時過ぎに千種の父が帰るとそのまま夕食。
 そのあとは、武藤夫妻の好意で、3人揃って先にお風呂に入ることになった。
 さすがに全裸になるのは初めてだが、プールや部活で何度も着替えは共にしている。
 マキも、さほど抵抗感なくふたりの友人と一緒に脱衣場で服(今日はマリンボーダーのキャミソールとデニムのキュロットだ)を脱ぎ、タオルで体の前を隠しつつ、風呂場に入って行った。
 家自体と同様、武藤家の風呂場は、一般家庭にしては洗い場も浴槽も非常に大きく、子供3人が一緒に入ってもまだかなり余裕があった。
 期せずして3人の「フゥッ~」と息をつくタイミングが重なり、マキ達は顔を見合わせてクスクス笑い合った。
 かしましく雑談をしながら、髪を洗ったり、日焼けの跡を比べたり、仲良く背中を流しっこしたりと、微笑ましい光景が続く。
 仮にこの光景をコッソリ覗いている不届き者がいたとしても、3人の中のひとりが生物学的にXY染色体を有しているとは、露程も思わないに違いない。下手すると当の本人でさえ、その事実をややもすると忘れがちなのだから。

 その夜は、千種の寝室で、彼女のセミダブルベッドに枕を3つ並べて一緒に布団に入り、千種・マキ・しずるの順に並んで寝ることになった。
 常夜灯の明かりの下、睡魔が訪れるまでのひととき、楽しく雑談に興じていた3人だが、ふと、しずるが口にした一言で雰囲気が一変する。
 「それにしても……フフッ、マキももうすっかり女の子だね♪」
 からかうようなニュアンスだが、しずる自身に他意はなく、むしろ親しみを込めての発言のつもりだったのだが、マキの表情が微妙に暗くなる。
 「──そっか。私、ホントは男の子なんだっけ」
 どうやら本当に本人も忘れかけていたらしい。あるいは……思い出したくなかったのか?
 「……マキちゃん、新学期が始まったら、元に戻っちゃうの?」
 おずおず、と訪ねる千種に、躊躇いがちに頷くマキ。
 「イヤだよ! せっかく仲良くなれたのに……」
 途端に半ベソをかく千種に触発されたのか、マキも激情を露わにする。
 「私だって……私だって、戻りたくないよ! 男の子なんかより、女の子でいる方がずっと楽しいし、千種ちゃんやしずると一緒にいたいもん! でも……」
 「そういう約束だから」と呟くマキの両目からは、いつしか大粒の涙がボロボロと溢れ出している。
 「ごめんね、マキ。泣かないで」
 しずるが優しくマキの頭を抱き寄せ、千種も慰めるようにその背に寄り添う。
 「何か方法がないか考えましょう。とりあえず、二学期になったらあたしから先生にそれとなく聞いてみるわね」
 「マキちゃんがマキちゃんのままでいられるよう、千種も、応援するから!」
 「ありがとう……ふたりとも」
 どうやら3人の少女達の友情と絆は、哀しみを共有することで、ますます強くなったようだった。

 ──そして、ついに9月1日、二学期の始まる日が来た。

204 :『スクールガールラプソディ』4:2011/09/10(土) 09:46:23.51 ID:iqh7Hpd2
#完結編。とは言え、「俺達の戦いは始まったばかりだ!」的「第一部完」感が無きにしも非ず。まぁ、伝説の「武士沢レシ●ブ」ほどじゃありませんが。

『スクールガールラプソディ』(完結編)

 二学期が始まる9月1日の朝。
 目が覚めたマキは、自分でも不思議なくらい落ち着いた気分だった。あるいは、これが「開き直る」というコトなのかもしれない。
 すっかり着慣れた女の子用の下着を身に着けると、シミーズ姿のままタンスの前に立ち、今日の服装を選ぶ。
 最後になるかもしれないこの4日間くらいは、せめて「年頃の女の子らしく」自分でファッションを選んでみたかったのだ。無論、母親は優しくOKしてくれた。
 今朝は、先週の日曜にしずる達と出かけた時に買った半袖の切り替えボーダーワンピースを選んだ。一見したところ白いTシャツとピンクのミニスカートを着ているように見えるタイプで、胸に英文字でブランド名が大きくプリントされているのがオシャレだ。
 スカート部はかなりのミニで、少し激しく動くとショーツが見えかねないが、このふた月あまりでマキも随分スカートの裾さばきに慣れたので大丈夫だろう……たぶん。
 9月に入ったとは言えまだまだ日差しが強いので、足元は白のショートソックスを選び、健康的にうっすら日焼けした太腿からふくらはぎにかけての肌をさらす。
 「おはよう、ママ」
 ダイニングに降りて挨拶すると、母親はいつもにもましてニッコリと微笑んでくれた。
 「おはよう、マキちゃん。その服、よく似合ってるわよ」
 「エヘ、そう、かな?」
 褒められると素直に嬉しくなる。
 思い起こせば、かつての「真樹」が母に褒められたことがどれだけあっただろうか。いや、それどころかここ数年は母との会話をどこか疎ましいものに思っていたのではないか。
 改めてかつての自分を振り返り、愕然とするマキ。「マキ」になって本当に良かった。
 (でも……)
 と暗くなりかける思考を無理矢理振り払い、朝食を口にする。
 食後の歯磨きは念入りに。口をすすいだあと、鏡を見ながら先日母に買ってもらったリップクリームを付ける。
 口紅ほど劇的に色が変わるわけではないが、それでも唇が艶やかになりほんのりピンク色に染まると、なんだか少しオトナになった気がした。
 ダイニングに戻ると、いつも通り母の前に腰かける。
 ニコニコしながら母がマキの髪を優しく梳(くしけず)り、何かアクセサリーを付けようとするのはいつも通りだが、今朝のマキはそれを拒絶しなかった。それどころか、今日の服と髪型には何が似合うか、積極的に母と意見を交わしたくらいだ。
 しばしの検討の結果、マキの前髪には淡いクリーム色のカチューシャが留められていた。シンプルなデザインだが、今のマキのナチュラルボブっぽくまとめられたヘアスタイルにはマッチしていた。
 「それじゃあ、ママ、行ってきます」
 これまたすっかり身体に馴染んだ赤いランドセルを背負うと、マキは学校へ向かって歩き出した。
 いつもより少し早めに家を出たせいか、通学路にはまだあまり人がいない。

205 :『スクールガールラプソディ』4:2011/09/10(土) 09:46:48.36 ID:iqh7Hpd2
 ふと、マキは、少し先を歩いているのが、クラスメイト──それどころか「真樹」にとっては一番親しい友達と言ってもいい少年、森谷繁久(もりや・しげひさ)であることに気付いた。
 (どうしよう……挨拶した方がいいかな)
 マキになって以来、繁久からは明確に避けられていることは理解していた。
 それもある程度は仕方ないのだろう。担任の三葉が、今回の一件が始まるに際して、男子に「河原さんを、変にからかったり、悪戯したりしないようにね。さもないと……(ニッコリ)」と釘を刺していたからだ。
 一罰百戒……という言葉までは、マキは知らなかったが、今のマキを見て「自分も女子にさせられたら」と言う恐れが、男子の無軌道な行動を戒めていることはおぼろげに理解していた。
 (どうしてかなぁ……女の子でいるのって楽しいのに)
 ふた月程前の自分なら決して頷かないだろうことを自然に考えているマキ。
 しかし、そんなマキの目から見ても、繁久はどことなく元気がないように思えた。
 考え事でもしているのか、どう見ても前方不注意だろう。
 躊躇いを振り切って、声をかけようとした時、マキはハッと目を見張った。
 通りの向こうからクルマが来ているのにも気づかず、ボーッと惰性で歩いている繁久が横断歩道を渡りかけているのだ。
 「あぶないっ!!」
 反射的に駆け出すマキ。ほんの数歩の距離がもどかしい。
 それでも、何とか繁久のランドセルに手をかけ、思い切り引っ張ることができた。

 * * * 

 さて、ここでほんの少しだけ時間を巻き戻そう。
 桜庭小学校5年A組に所属する少年、森谷繁久はここ最近悩んでいた。
 悩み事の対象は、言うまでもなく、いちばん親しい友人であったはずの河原真樹のことだ。
 直情的でやや子供っぽい真樹に比べ、逆に繁久は年齢不相応に落ち着いており、頭もいい。精神年齢的には、実年齢よりおそらく2、3歳上に相当すると言ってよいだろう。
 しかし、そんな繁久をもってしても、今回真樹に強要された「罰」は予想外かつ戸惑わざる
を得なかった。
 そして、最初の数日間こそ、ふてくされつつも不安げで、いかにも「男の子が嫌々スカートを履いている」風で周囲から浮いていた真樹が、週末になるころには少しずつ女子の輪に受け入れられていくのを驚きの目で見つめていたのだ。 
206 :『スクールガールラプソディ』4:2011/09/10(土) 09:47:16.81 ID:iqh7Hpd2
 さらに、日が進むにつれ、真樹はどんどんクラスの女子の輪の中に馴染んでいく。夏休みに入る頃には、知らない人間が真樹のことを見れば「ちょっとボーイッシュで元気な女の子」だと思ったに違いない。それくらい自然に女の子たちの中に溶け込んでいた。
 また、呉羽しずると武藤千種という親しい女友達も出来たようだ。
 一番の友達を自認する身としては、どうにもおもしろくない事態だった。

 そして、夏休みに入ってからも、繁久は何度か真樹の姿を目にしていた。別にストーカーしていたわけではなく、彼は男子バスケ部員なので、同じく月曜の午前に練習のある女子バレー部を見かけることが多かっただけだ。
 女子バレー部で活動している真樹は心底楽しそうだった。何より輝いて見えた。
 しかも、部活の行き帰りの真樹──いや、マキの私服姿を目にするたびに、繁久は少なからず動揺してしまった。夏休みが始まる前以上に、マキが「女の子」していたからだ。
 実は、一度だけ市民プールで遠巻きにマキ、しずる千種の3人が水遊びしているのを見かけたことがある。まだ幼いとは言え、いずれ劣らぬ美少女が集まってはしゃいでいる様は、少なからぬ目立つ光景だった。
 美少女──そう、水着姿になってさえ、マキは他のふたりと同じく、外見も仕草も話し方も「小学校高学年の可愛い女の子」にしか見えなくなっていたのだ。
 この頃から、繁久は、胸の奥で何かもやもやするような感覚をおぼえていた。
 今日から二学期が始まる。そろそろ自分もマキを避けてばかりはいられないと思うのだが、正直どんな態度で接していいか、決めかねているというのが現状だった。

 ──と、歩きながらココまで考えたところで、いきなり背後から強く引っ張られる。
 「……へ? うわぁ!」
 バランスを崩した繁久は、引っ張った誰かを撒き込んで、歩道に倒れ込む。
 だが、すぐ目の前をクルマがけたたましくクラクションを鳴らしながら通り過ぎて行くのを見て、自分が間一髪助かったのだということが、繁久にも理解できた。
 「あ、ありがとう。助りまし……」
 恥ずかしいのを誤魔化すように素早く立ち上がり、尻もちをついている命の恩人(というのは大げさか?)を助け起こそうとした繁久だったが、自分を助けたのが誰かを知って言葉が途切れる。
 言うまでもなくそれは、先程まで想いを馳せていた河原マキにほかならなかったからだ。
 「いたたた……もぅ、ダメだよ、森谷くん。幼稚園児じゃないんだからさ。横断歩道では、クルマに気をつけないと」
 「あ、ああ。そうだよな。すまん」
 「メッ!」と指をつきつけるマキの迫力に負けて何となく謝ってしまう繁久。きまり悪げに、頭をかいたところで、繁久の目にトンデモナイモノが飛び込んできた。
 「あ~、そのぉ……河原」
 「ん? なに、森谷くん?」
 「そろそろお前も立ったほうがいいと思うんだが」
 微妙に逸らそうとしつつも逸らしきれていない繁久の視線の先を辿ると、そこには尻もちを着いたマキの、めくれ上がったスカートが……。
 本人も気づいたのか、ピョコンと立ち上がり、スカートの裾を押さえて顔を真っ赤にしている。

207 :『スクールガールラプソディ』4:2011/09/10(土) 09:48:08.70 ID:iqh7Hpd2
 「──み、見た?」
 「あー、その……ごめん」
 ここで誤魔化さずにバカ正直に答えてしまうのが、森谷少年の長所であり欠点でもあった。
 運がいいのか悪いのか、今朝のマキは、勝負下着というわけでもないが、下ろしたての新品のショーツを履いていた。薄桃色のやや履き込みの浅いデザインで、フロントにレースのフリルが三段重ねになった可愛らしい代物だ。
 「…………森谷くんのえっち」
 「なッ!? ち、ちがう!」
 不可抗力だ、と繁久が抗議するまえに、マキは恥ずかしそうに学校へと駆け出していってしまった。
 「──いっちまったか。でも……」
 網膜に強烈に焼きついた「ピンクのパンティー」と「日焼けしたスベスベの太腿」のコントラストに、思わず鼻の下が伸びる繁久。どうやらマセているぶん、早くもムッツリスケベな傾向が彼にはあるようだ。
 ニヤニヤしている自分に気づいて、慌ててキョロキョロする繁久。間違いなく挙動不審だ。
 先程までの悩みもどこへやら。どうやら、森谷少年もマキのことを完全に「女の子」(それもちょっと──いや、かなり気になる娘)として認識するようになったようだ。

 * * * 

 二学期が始まってからの河原マキは、「期限」のことなど忘れたかのように眩しい笑顔を周囲に振り撒いている。
 それだけではなく、積極的に色々な人に話しかけてクラスの雰囲気を変えようとしていた。
 自分のように女の子と仲の悪かった、バカにしてさえいた人間でも、キチンと親身になって接していたら、その良さがわかる。それはたぶん逆も同じはず。
 なのに、男子と女子で対立、あるいは互いのことをわかろうとしないのはあまりにむなしい。
 はっきり意識していたわけではないが、言葉にすればそんなところだろうか。
 皆さんも記憶にあるだろうが、小中学校のクラスの雰囲気や傾向というヤツは、同じ学校であってもかなり差がある。
 たとえばこの桜庭小学校を例にとれば、一学年上で、三葉の同僚の星乃が担任をしている6-Bなどは、男女問わず仲が良く、また教師の言うことを素直によく聞く、「いい子」が多いクラスだ(もっとも、お人好し過ぎて、逆に社会の汚い部分に触れた時の反応が怖いが)。
 それに比べると、5-Aは「問題児」とは言わないまでも、その予備軍が何人かいて、全体にカリカリした雰囲気だった。男子と女子の仲も険悪だ。
 しかしながら、マキも含めた様々な要因のおかげで、5-Aは大きく変わろうとしていた。

208 :『スクールガールラプソディ』4:2011/09/10(土) 09:48:31.19 ID:iqh7Hpd2
 「ねぇ、しずちゃん、マキちゃんのコト、どうするつもりなの?」
 「そうね。先生に話す前に、あたし、まず女子のクラスメイトから署名を募ろうと思ってるわ」
 「しょめい?」
 「ええ。駅前とかでも「何々のことでご署名お願いします」って言って時々やってるでしょ。そうやって多くの人の意見をまとめて持っていけば、先生も無視できないと思うし」
 「そっかー」
 そんな会話を、呉羽しずると武藤千種が交わしたのが、9月1日の朝のこと。
 その言葉通り、しずるは5-Aの女子は元より、女子バレー部や隣りのクラスの顔見知りなどからも、「今後も河原マキを女子として通学させてほしい」という署名を集めていた。
 以前は委員長気質で杓子定規なところのあり、ややけむたがられていたしずるだが、マキや千種とのつきあい、バレー部での活動などを通じ、良い意味で融通が利くようになっていた。そのため、彼女の訴えに少なからぬ女生徒が耳を傾けてくれた。
 そして、しずる以上の成長とがんばりを見せたのが、千種だった。
 内気で目立つことが嫌いだった、異性はもとより同性ともあまり話をしなかった千種が、大切な友達のために自分ができることをやろうと決意したのだ。
 (女の子には、しずちゃんがよびかけてくれてる。だったら千種は……)
 勇気を振り絞って、男子に署名を呼び掛ける千種。
 彼女にとって幸いだったのは、男子の頭脳労働面のリーダー的存在である森谷繁久が、なぜか率先して署名してくれたことだろう。それが呼び水となって、5-Aの男子全員とは言わないまでも、少なくない人数が「河原マキ」の存在を肯定してくれたのだから。

 9月4日──いよいよ運命の放課後。
 一学期の終わりと異なり、マキの両隣りには、友達ふたりも同行していた。
 緊張しつつ、職員室で担任の蒼井三葉を探すと、彼女は「ココじゃなんだから」と、小会議室へと3人を導いた。
 「あの「先生、マキの、河原さんのことで、お願いしたいことがあります!」……」
 マキが話しかけたところで、しずるが口を挟む。
 女子から集めた署名のことを告げ、精一杯の熱意をもって、マキを女子生徒としてこのまま通学させてほしいと、しずるは直訴した。
 チラとしずるの目配せを受けて、千種も拙い言葉で男子の何人かからも同様の署名を集めたことを述べ、「大事なおともだちを取り上げないでほしい」と訴えかける。
 そして、当事者であるマキ。ここに来るまでは素直に担任の裁定に従うつもりだったが、親友ふたりの熱意に触発され、何とかこのままでいる許可を得ようと、自らの想いをストレートにブツける。
 「──なるほど。三人の気持ちと努力はよくわかったわ。でも……」
 逆接の単語で言葉を切った三葉を見て、「ダメか」と落胆しかける三人娘たち。

209 :『スクールガールラプソディ』4:2011/09/10(土) 09:48:56.69 ID:iqh7Hpd2
 「ねぇ、河原さん、先生はあの時、「これから最低1ヵ月間、キミに女子生徒として生活してもらいます」って言ったわよね? で、一学期の終業式の日も、「少なくともあと4日は二学期もそのままよ」って言ったわ。覚えているかしら?」
 「……はい」
 「うん、ちゃんと覚えてたのね。感心感心。でも、逆に言うと、特に上限は決めてないはずなんだけど」
 マキの目が大きく見開かれる。
 「え? え? そ、それじゃあ……」
 「うん、いいわよ。少なくとも先生が担任であるうちは、河原さんが望むなら女子として扱います。学校にもキチンと話を通しておくから」
 進路や悩み事相談用に防音の効いた小会議室でなければ、三人娘の歓声は周囲から「うるさい」と怒られただろう。

 * * * 

 さて、その後のことについては、取り立てて説明すべきことはあまりない。
 河原マキは、毎日女子生徒として元気に桜庭小学校に通っている。
 クラスメイトや部活の仲間との関係も良好。家族も、拍子抜けするほどアッサリとマキの希望を認めてくれた。まぁ、両親とも「娘が欲しかった」ようなので、ある意味納得だが。
 強いて挙げるなら、5-Aの雰囲気も、6-B程ではないにせよ、以前と比べると随分と和やかになり、またまとまりが出てきたことくらいだろうか。

 秋の文化祭、体育祭なども、マキは学校公認で女子枠で参加した。
 冬休み、大晦日、お正月……。無論、三が日は振袖姿で初詣と年始回りに出掛けた。
 2月のバレンタインにマキは、かつての友人であり、最近また少しずつ話す機会が増えている繁久に、親愛の意を込めてチョコを贈り、周囲から冷やかされたりもした(ちなみに3月14日には、コッソリ彼からお返しをもらった)。

 そして、迎えた4月。無事に蒼井三葉が6-Aの担任になったおかげで、マキは卒業するまでこのままでいられる事が確定した。
 加えて、天迫教諭のツテを通じて、着用者の体型を強力に補整する特殊な「ファーストブラ」を入手してもらうことができた。これのおかげで、マキの胸にもささやかだが女の子らしい膨らみができ、体型に関するコンプレックスがいくぶん軽減されることとなる。
 今や、河原マキを男の子扱いする人間は、周囲にまったくと言ってよい程いない。それどころか本人でさえ、風呂で股間を洗う時でもない限り、すっかりそのことを失念しているのだ。
 中学はどうするのかなどと将来的な問題はまだまだあるものの、現在に関して言えば、マキは全力でガールズライフを楽しんでいるのだった。

~スクールガールラプソディ・完~

210 :『スクールガールラプソディ』4:2011/09/10(土) 09:49:34.85 ID:iqh7Hpd2
#以上で、河原マキのお話は、ひとまず終了。マキちゃんの日常については皆さんのご想像にお任せします。
#あまりにご都合主義的なのは承知の上。この世界にはいわゆるTS病(男性が女性化する)が実在し、その影響もあってGID(とくにMtF)に寛容……という設定ががが。
#一応、バレー部の先輩である武内ちはやとか蒼井先生の同僚である天迫先生のラインから、中学は星河丘学園に進学することを想定してます。アソコに入ってしまえば、スーパー養護教諭こと「星河丘の魔女」双葉あるとが、身体面は何とかしてくれるでしょうし。
#以下は、蛇足的な「ちょっとえっちなオマケ」です。本編の爽やか(?)な風味は皆無なので、余韻を楽しみたい方は、しばらくしてからお読みください。

『スクールガールラプソディ後日談・初めての●●』

 さて、6年生に進級し、学校でも家でも完全に女の子としてのライフスタイルが板についた感のある河原マキだが、そうなったらなったで色々と「おませ」なお年頃。
 以前はスルーしていた事柄にも徐々に興味が湧いてくる。
 具体的には……エッチなこととか(笑)。
 まぁ、周囲に耳年増な友人(ちなみにマキの場合はしずる)がいると、どうしても仕方がないだろう。
 ただし、マキが耳にしたのは女の子としてのソレであり、また現在の「彼女」も自分を男とは認識していないので、ソレに関する知識も微妙に歪んでいるのだが。
 「ど、どうしよう……もらっちゃった」
 しずるの家に遊びに行った際、傍から聞いているとかなり際どいガールズトークをヒソヒソとくり広げたのち、帰り際に「マキに、いいものあげる」と袋を押し付けられた。
 家に帰り、夕飯の後、自分の部屋でそれを開けてみたのだが……。
 「こ、これって「ローター」ってヤツだよね?」
 小さなピンク色のプラスチックの機械を手に、途方にくれるマキ。

 ──正直興味が皆無というわけでもないのだ。
 ただ、それが「イケナイコト」だという認識があったから、マキはあえてこれまで性的な事柄を避けてきたのだ。
 だが、ついにその自らに課した枷の一端が崩れ去ろうとしていた。
 幸いにして、父は出張中だし、母も夕飯の後、町内会の会合に出掛けて、あと1時間ほどは戻らないはずだ。

 「えっと……確か、こうやって……」
 ゴールデンウィークが終わり、梅雨まではまだ少し間がある春先のこの時期。マキは、オフホワイトのふんわりしたシフォンチュニックと、アイスブルーのフリルスカートというラフな格好をしていた。
 ベッドに腰かけ、チュニックの裾をまくりあげて胸を露わにすると、最近着け始めた白いブラジャーが目に飛び込んでくる。
 ブラの補整効果のおかげとは言え、微妙な曲線を描く自らの胸にマキは照れくささと誇らしさを同時に覚える。
 そのブラもズラして、なんだか少し大きくなってきた気がする乳首を露出させると、マキはピンと尖ったソコにスイッチを入れたローターを恐る恐る近づけた。

211 :『スクールガールラプソディ』4:2011/09/10(土) 09:50:18.89 ID:iqh7Hpd2
 ──ぴと
 「ひぅん!」
 僅かに振動が触れただけで、胸から脳に向かって走った快感パルスの強さに、思わず悲鳴のような声をあげてしまい、慌てて口押さえるマキ。
 部の先輩やしずる達の話を聞いていた時は、「大げさだなぁ」と思っていた。あるいは、それが本当であっても、身体的には残念ながら女子と言えない自分とは無縁の話だと。
 しかし、今、実際にそれを自分に使ってみた感想は「すごい……」の一言に尽きた。
 手にしたローターを右の乳首にあてがい、再び湧き出てくる快感を身をくねらせて堪えながら、マキはもう片方の手で左の乳首を刺激してみた。
 その行為も、ローターとはまた異なる気持ち良さを生じさせる。
 気が付けば「彼女」は、夢中で自らの胸をいらい、摘み、僅かな膨らみを懸命に揉みさすりながら、甘い喘ぎ声を漏らしていた。
 やがて十数分後、ほんのりと顔を上気させたマキはベッドに仰向けに倒れ込み荒い息を漏らしていた。
 (き、気持ちいい……けど……もっと気持ちよくなりたい)
 横になったまま、乱れたスカートをまくりあげ、スルリとショーツを下ろす。
 「しずるは……どうやるって言ってたっけ……」
 恥ずかしさから聞き流していた友人の言葉をおぼろげに思い出しつつ、ローターを剥き出しの下半身へと押し当てる。
 人体用接着剤と謎の技術のおかげで、パッと見、女児の股間のスジに見えるアソコ(ちなみに、マキはあれ以来ずっと一年近くもタックを解除していない)。
 "縦スジ"の中央部にローターを押し付けるが、もどかしい気持ち良さのかけらが伝わり、焦らされるばかり。さすがにそこまで本物の女性と一緒というわけにはいかないようだ。
 しかし、快楽探求に目覚めたマキは、あきらめることなく感じるポイントを探し、思考錯誤の結果、まず"縦スジ"の下部から僅かこに顔を出している「カメさん」の頭部を見つける。
 これまでの刺激の結果だろうか、その先端からはヌルヌルしたものがとめどなく溢れていた。
 マキは、そのぬめりのある液体をローターの表面になすり付ける。
 最終目的地は……さらにその後ろだった。
 (男のコにも、女の子と同じように感じる部分があるって、先輩が言ってたよね)
 いらないことにばかり博識なとある6年生の猥談を想い浮かべつつ、マキはピンクの振動する物体を、ムズムズする自ら下半身に存在する唯一の孔へと押し当てる。
 「! あふぁ……ちょ、これ……」
 背徳感と実際の刺激の相乗効果で、未知の快感がマキの下半身から脊髄へと駆けのぼる。
 殆ど自覚なしに、マキは指先を押し込み、小さなプラスチック塊を自分の「体内」へと侵入させていた。
 ──にゅるん
 あっけない程素直にソレを飲み込むマキの身体。たいした力も入れていないのに、どんどん奥に入っていく。
 「に゛ゃあ゛ぁぁぁっ!」
 すると即座に、下腹部から発生した熱いうねりが、「彼女」の全身へと波及し、たちまちマキの理性をグズグスに溶かしてしまう。

212 :『スクールガールラプソディ』4:2011/09/10(土) 09:57:07.48 ID:iqh7Hpd2
 「はぁっ……はぁっ……お、おしりが……あつひ……よぉ……」
 「身体に力が入んない……から、気持ちいいのから……逃げられなくて……頭の中まで ぐちゃぐちゃで……こ、こんなのガマンできなぃ……」
 「あぁっ、あついのがっ、私の体内(なか)で、ブルブル震えててて……」
 幼いながらも、発情した牝そのものの表情で熱い吐息を漏らすマキ。
 「やっ……ああっ、コレっ……なに? ら、らめぇっ……」
 やがて、体内の一点──前立腺のあるあたりに蓄積された熱い快楽の塊りが、そのまま弾けとびそうになっているのを感じる。
 マキは理解した。コレが「イク」という感覚なのだと。
 (たしか、「イク」時は好きな男の子の事を思い浮かべると、より気持ちが高ぶるって……)
 先輩の語る体験談を思い出したところで、ふと脳裏に浮かぶのは、クラスメイトのひとり。かつてもっとも親しく、また現在も男子の中では一番多く言葉を交わす少年──森谷繁久の顔。
 「はうンッ!!」
 途端に、胸の奥に甘い疼きが走り、すぐさまそれが下半身の熱と合流してさらなる高みへとマキを導く。
 「また……きもち、よく……ぅああっ、来るぅっ! ううん、イクッ、イクイクイっちゃぅぅぅーーーーーーッッッッ!」
 ついに、身体の深奥部でナニカがはじけた。
 「あ……私、イッちゃっ…たんだ……」
 頭の中が真っ白になる感覚がしばらく続き、ようやくマキが何とかまともに物を考えられるようになったのは、それから十分近くも経ってからだった。
 当然と言うべきか、それは射精による快感ではない。その虚脱感なら長くもせいぜい2、3分で終わる。
 つまり……マキは、生まれて初めてのオナニーによる性的な絶頂を、アナルへの刺激で、しかもよりにもよって女性のソレと近いと言われるドライオーガズムとして感じてしまったのだ。
 こうなってしまっては、もはやごく普通の男としての快感では、到底満足できまい。
 もっとも、当の本人は、逆に今の快楽に深い満足を得ているようなので、ある意味無問題なのかもしれないが。
 その証拠に、彼女は卓上の置き時計を見て、「ママが帰ってくるまでに、もう一回くらいデキるかな?」なんて考えている。まだ体内で蠢き続けるローターの刺激によって、再び熱いものがこみ上げてきたからだ。
 「私……エッチなコになっちゃったかも」
 自覚はあるようで、恥ずかしげに顔を火照らせながらも、マキはとても幸せそうだった。

-FIN-

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